芝居が好きだと気づく 伊勢大貴の求めるその先

すらりとした長身に、タンクトップ姿。夏日といえる気温の中、自転車で現れたその方は俳優の伊勢大貴さんです。(そのあと、写真のシャツに着替えていらっしゃいました)舞台デビュー間もない頃に出演したミュージカル『テニスの王子様』では日吉若役を務め、2.5次元、ストレートの舞台まで幅広く活躍されています。また歌手として活動も広げ、最近も俳優のエッセンスと歌手のご経験とを併せた新曲「どろんこの暴走列車」をリリースしました。

そんな人気俳優である伊勢さんにはSakaseruを通じても多数お祝い花をお届けさせて頂いており、インタビューにお答え頂くことができました。

舞台を中心に活動される伊勢さんは、新型コロナウイルスにも大きく影響を受けています。突如大きく空いた時間の中で、伊勢さんは何を考え、どう行動していたのか。役者としてのステップから、そんなごく最近の出来事まで、お話をお伺いしました。





“まずは三年”
芝居を好きになるまで


「役者としての自分は、『まずは役者を3年続けてみなさい』……芸能スクールの先生から言われた、その言葉から始まりました」

そう話す伊勢さんが地元北海道から上京してきたのは、歌手を目指してのことでした。しかし伊勢さんは芸能スクールに入る前、その夢を少し、軌道修正しました。

「歌はもちろん好きでしたが、“仕事“として、そのための努力を続けられるだろうかと、疑問がありました。自分にはそこまでの才能がないと感じていたんです。
だから芸能スクールには、タレントコースで入りました」

芸能という仕事を幅広く学ぶタレントコースで、伊勢さんは冒頭の、まずは役者を3年という言葉を聞くことになります。当時は役者という仕事に苦手意識さえあり、やってだめだったら地元に帰ろう――そんな気持ちだったそう。
伊勢さんにとって大きな転換点となる、ミュージカル『テニスの王子様』も、そんな3年の間に決まった仕事の一つでした。

現在も人気の衰えない有名タイトル。伊勢さんにとっては、“大きな仕事”、ただそれだけではありませんでした。
それは『テニスの王子様』ある日の本番のこと。主人公・越前リョーマのライバル校・氷帝学園の日吉若を演じた伊勢さんは、リョーマに敗北したあとの舞台袖で、号泣しました。
役と一体になったような感覚。後で聞けば、初代・日吉役の役者さんもそのような感覚になったそうです。

「その時に、『もしかしたら、自分は役者なら才能があるのかもしれない』と感じたんです。それを機に、徐々に芝居というものを好きになっていきました」





その後、伊勢さんは役者として、もがき始めます。

「最初の“3年”が終わった後は、『どんな芝居が好きか』を探す“3年”が始まりました。
日吉役をきっかけとして、色々な作品に呼んで頂けるようになったので、『どんな作品にも出るぞ』という気持ちでたくさんの舞台に立たせて頂きました」

数多くの舞台に立ちながら、がむしゃらに、役者としての経験を重ねる毎日の中で、伊勢さんに更なる転機が訪れました。
それはなんと歌の仕事。特撮テレビ番組『烈車戦隊トッキュウジャー』の主題歌を担うことになったのです。

「『もともとやりたかったことができるじゃん!』と、とても嬉しかった一方で、芝居からは数か月離れなければなりませんでした。
でもその数ヶ月が逆に良かったのかなと今になって思います。距離を置くことで、“全体”がぼんやり見えてきたというか。自分目線以外のお芝居が見えてきたんです」

それまでどのような役でも、同様の取り組み方をしていたという伊勢さん。でもそれがベストではないこと、「役によって」「脚本によって」あるいはもっと多くの要素で役の作り方が変わること、そしてその方法が、少しずつわかるようになりました。
そうしてお芝居に対する取り組み方を大きく変えた結果、ここ2年ほどは一層「芝居が楽しい」という実感を得ているそう。

「苦手なジャンルもほとんどなくなりました。以前は結構あったのですが、それも向き不向きではなく、単に『向き合い方』がわからなかっただけなのだと思います。考えながら経験を積むことで引き出しも増えましたし、苦手な分野へのチャレンジの仕方もわかってきたように感じます。
最近、自分の好きな芝居や楽しみ方がやっと分かってきて、もがき続けてきてよかったなと思います。
また壁にぶつかった時は気持ちも変わるかもしれませんが、一度乗り越えた経験があるので、きっと大丈夫です」





仕事で、生活で
新型コロナの影響で気づくこと


伊勢さんの充実した役者生活に水をさすように、新型コロナウイルスはその猛威を振るいました。
決まっていた舞台はすべて中止、もしくは延期になり、伊勢さんも時間を持て余してしまいます。

「自粛が決まって2週間ほどは本当に辛かったですね。とても楽しみにしていた舞台がすべてキャンセルになってしまって残念でしたし、生活も昼夜逆転していました」

その時間で脚本を書いてみるなど、新しい試みも行いました。しかし、脚本ができても出す場がありません。

「今回、発信する場所があるありがたさに、改めて気付かされました。僕たちは舞台のような“場”があって、そこにお客様が足を運んでくれて、初めて存在できるんですよね。
『当たり前が当たり前であることってすごい』、そう感じます」

もう何年も経験していなかった長いオフの日々。戸惑う伊勢さんでしたが、ある日を境に、これではいけないと生活を改めました。

「まずは生活リズムを見直すところから。それからは発見の連続でした。
この時間を通して“新しい自分らしさ”を見つけることができたと思います。
例えば、今までオフの日は飲みに行くか、買い物にいくかとかしていて、それだけが自分の選択肢だと思っていました。でも、自粛でそれもできなくなって、緊急事態宣言が明けたあと、ふと近所の公園に行ってみたらすごく楽しくて。これまで見えなかっただけで、生活の中に別の選択肢も沢山あること、それを見つけるともっと自分らしく生きられるということに気づいたんです」

自転車での移動も、その新たに見つけた選択肢の一つだそう。これまで移動といえば電車しか思い浮かべなかったところを、試しに自転車で移動してみれば、「楽しい」。最近は仕事場にも自転車で向かうのだと言います。
また、仕事が取りやめになってしまったからこそ、お芝居に対して気づけた感覚もあるそうです。





「舞台に立てなくなったことで、自分は芝居をするのが本当に好きだったんだと気が付きました。
僕のキャリアは『芝居が好きな人』というスタートではありませんでしたから、そこまでの自覚がなかったし、芝居が好きと大声で言うのもどこか照れくさかったんです。でもこれを機に、そういう自分がいることも、認めないといけないですね」

そんな、伊勢さんの一部となったお芝居ですが、“お芝居”や“舞台”と一口に言っても、様々な種類のものがあります。伊勢さんの中でその違いで気持ちにも変化はあるのでしょうか。

「好き嫌いはありませんし、すべての仕事に全力で取り組んでいますが、役者さんが少人数のお芝居の方が、より勉強になるなと思います。人数が少ないとどうしても、一人ひとりの影響力も大きくなりますから」

伊勢さんの口からしきりに出るのは、「勉強」や「考える」という言葉。経験を積み考えたその先には、何を目指すのでしょうか。

「僕は『テニスの王子様』の日吉役の時のような、経験も記憶も、心臓の鼓動まで全部リンクしているあの感覚を追い求めて、芝居を続けています。
滅多に経験できないことですから、そのためには準備をしなければいけません。表現の仕方を考えて、トライして、自分のものにしていく。その繰り返しで、あの感覚に近づけていくんです」





応援してくれるみんなへ


お芝居のその先にあるのは、お客さん、そして何より、応援してくれるファンの方々です。若い女性ファンから、戦隊モノ時代に知ってくれた小さな男の子まで――伊勢さんを応援して下さる方々は、伊勢さんにとって、どんな存在でしょうか。

「一番、恩返ししなければならない人たちです。お手紙などもすべて読んでいますが、僕以上に僕のことをよく見てくれているんです。
だから、僕は皆さんのことをすごく信頼していて。等身大の僕を真っ向から見て、ぶつかってきてくれるので、本当にありがたい存在です。
そういう人たちがいてくれるから僕は続けてこれたし、見てくれる人がいないとどうしようもない仕事ですから。
大切です、本当に」





ファンの方への想いも、少しずつ変化をしているそうです。そちらも含め、伊勢さんの言葉で、伊勢さんを応援する皆様へメッセージを頂戴しました。

「以前は自分がみんなを引っ張っているつもりだったんですが、今は色んな所に“一緒に行っている”んだなと思っていて。付いてきてもらうというよりは、隣を歩いてくれてるような感覚です。
正直自分は、口下手なところがあります。だけど、だからこそ、その分芝居で気持ちを表現するし、歌で曲の魅力も想いも絶対伝えるので、これからもそれを見に来て欲しい。全力のパフォーマンスで、恩返ししたいと思っています。
Twitterとかインスタも頑張るんで……苦手ですけど、僕なりに頑張るので、……
これからも伊勢大貴をよろしくお願い致します!」





インタビューを終えて



照れ屋で、真面目で、お芝居に対しストイック。伊勢さんとお話させて頂いて感じたのは、そのような印象でした。
お話の中で「全然自分に自信がない」という言葉もあり、ご自身の現状に決して満足しない、お仕事に対する意識の高さが垣間見えました。(ご本人曰く「芝居は特別で、こうなるのは芝居に関してだけ」とのこと)

しかしそう語る言葉は堂々としていて、これまでやってきたことに対しては、しっかりと自信と自負があるのだろうなと感じます。格好いい外見と堂々とした態度、そして“シャイ”とも思える様子とのギャップ。目を離せなくなるような魅力がある方でした。

その魅力の根源とも言える、お芝居への情熱とお考え、そしてそれを支えるファンの皆様へのお話をたっぷり聞かせて頂きました。

伊勢さん、お忙しい中お時間頂き本当にありがとうございました。
この先伊勢さんが演者さんとしてどのような場所に至るのか、ささやかながら応援させて下さい!

こちらは自転車での移動時間を誤って調べてしまったことに直前で気付き、大急ぎで取材場所に来て下さり、汗だくで冷房にあたる伊勢さんです。 ※取材時間には間に合いました。



【今回のインタビュー:伊勢大貴さん】
今後の出演情報は以下です。詳しくは公式HPにてご確認下さい。
2020年7月23日(木祝)~8月2日(日)@新宿シアターモリエール
舞台「12人の怒れる男」


http://naikon.jp/12_tokyo.html


【取材・執筆】Sakaseruアスカ
【撮影】Sakaseru小柴

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